島の賃貸事業を色々あって断念した話

不動産事業

ずっと昔、ここで触れた話

その入札結果がでまして、これまで競争相手を増やしたくなくて必要最低限しか言ってこなかったのですが、結果も出て(努力の甲斐なく自分以外に5件の入札があったようで)一区切りかなと思ったので、これまであったことをまとめておこうかなと思って、ブログも1年ぶりに更新しようと思い立ちました。静かに、落札企業によって素晴らしい活用がされることを祈念しながら。

地域貢献という意味では、地域の遊休資産の活用につながったことは誇りに思いますし、手前味噌ながら入札の俎上に乗せるまで市役所を動かし、呉市に1300万(購入金額にあわせ、将来1000万かけて取り壊す費用を回避)の利益をもたらしたのは感謝状くらいもらってもいいのでは。(just kidding!)https://www.city.kure.lg.jp/soshiki/24/nyuusatu2-26.html

サマリー

結論を3行で(断念事由)

  • 入札は結局どうなるかわからない
  • 固定資産税は馬鹿にならない。
  • 人の都合も意識も移り変わる。長期プロジェクトであればなおさら。

建物のスペック

 呉市豊浜町にあるファミリー向け2DKが4部屋、一人用1DKが2部屋の鉄筋コンクリート造。おそらく新耐震基準以降の昭和の50年代築で、そろそろ築40年。もともと近くの中学校の教員住宅だった。

この2年間足繁く通った物件。これからどのように活用されるのかなぁ。

目指したビジネスモデル

 移住者向けの短期賃貸住宅。住宅が見つかったら卒業していくような場所をイメージ。社員一人でできるだけ手をかけない運用、ただしあまり儲からないのでそこは民泊で補完する計画だった。

本文

昨年の一月くらいにそろそろ本腰入れて意思決定しようということで、

  • ビジネスモデルの詳細化
  • 物件購入に当たるリスク
  • 会社を作るにはどうすれば

などを、当時一緒に起業しようとしていた仲間と一緒に頻繁に検討していた。

会社を作るには

 もともと中小企業診断士の勉強で、会社法は勉強したものの、実務については全然わからず。それでもやりたがりなので、(そしてスタートからお金はできるだけ使いたくない)法人登記も自分でやろうとしていた。

 必要なものは定款、資本金とするためのお金、細かく言うと法人名の決定。それぞれにルールが有り、定款は会社の憲法、ルールブックなので、起業時の役員全員の承認、押印が必要、(株式会社の場合は)その定款が会社法に抵触していないかを専門家にチェックして貰う必要があります。

呉市の公証役場。株式会社の設立の場合はここで、会社の定款をチェックしてもらいます。

資本金となるお金は、登記のときは問題ないものの、次のステップで金融機関からお金を借りるときに、資本金が一つの審査項目となるが、そのときに仮に入れたお金で水増ししたものでないか、というのを厳しくチェックされるらしい。企業名については、その他の先行する会社の権利を侵害するような名前になっていないかは、自分でチェックしておく必要があります。(不正競争防止法)

創業時の登記にかかるお金(登録免許税)が半額になる制度があり、それのために起業セミナーに通ったりもしていました。

隠れたリスクがたくさんあった

物件の見学を重ね、リスクの精査をしていきました。通常の不動産売買であれば当然この辺のチェックは行い、条件に組み込んだり価格交渉に使ったりとかするのですが、市役所はとても後ろ向き(別に嫌だったら買わんでもいいよ)なので、協力してもらえることは限られていましたが、建物側の水道管のチェックは市役所の協力を得てやってもらうことができました。

プロパンガスの管、電気は実際通して使ってみてから、もしだめだったら業者に見てもらってねという感じ。(ちなみに、地方のプロパンガスは自由競争の上プレイヤーが少ないのでめっちゃ高いケースが多い!!しかも古くからの付き合いで地域ごとに暗黙の業者が決まってたりする。それで近年はオール電化の家が増えているとか。。。。)

下水道チェック

  もともとこの物件、建てられたときには下水道が敷かれていなかったようで、大きな集団用の浄化槽がついていましたが、それも10年使っていないということで、そのまま使えるかどうかは定かでなく。その後、豊島にも下水道が通りました。法的には下水道が通っている地域の建物は下水道接続義務があるらしいんです(下水道法第10条)。とはいえ、なかなか市民に理解を得にくいそうで(つなぐ費用は住民負担だし)お願いベースになっていると上下水道局の人も言ってた。でも休止中はいえ公的な建物で繋がれてないってどうなのよ!

固定資産税高い問題

 前述の広島創業サポートへ通ったときにアドバイスを受けて(それまで微々たるものだと考えていたので全く視野に入っていなかったのですが)、市役所に問い合わせをしたのが最初でした。目を疑いました。なにせ、入札開始価格(180万)に対して、建物の評価額1600万、土地が400万という数字。おい、ここは街のど真ん中とちゃうねんぞと。理由を聞くと、建物の評価額は構造や広さ、諸経費によって決まるため、どこにあろうと関係ないんだそう。土地は路線価というのがあって、その地域の取引価格によって評価されるようなところもあるんですが。また、鉄筋コンクリート造は60年償却(木造は22年)。満額から60年掛けて少しずつ評価額がおち、最後は元値の2割まで落ちます。そのうち、まだ20年以上の償却が残っている。それも評価額高止まりの理屈なんだとか。また、広さの条件やそもそもビジネス利用ということで宅地の条件にも当てはまらない。

固定資産税は評価額の1.4%が原則なので、評価額が高いと税金も高くなるんです。それから、なにか交渉できる手段がないか、本当に色々調べました。宅地建物取引士の教科書には、不動産は一物四価と言っていろんな値段がありk固定資産税評価額は売買価格の7掛けだと書いてありますが、過疎地域、中山間地域では全く当てはまらない例も全国には散見されること。

裁判になっている例も。

もともと固定資産税は地方税ですが、それぞれの場所の事情に応じた減免の権限が市町村にあること。これをなんとか適用してもらえないかと、資産税課に足を運んだり、複数の議員さんに相談したりしたのですが、議員といえど最終的には市長を説得する必要があり、税収の低下に関わることは非常に難しいし、特別扱いもできないだろうと。そして、一度所有者になったら事情に関係なく冷たく取り立ててくるよ、とも。議員さんの忠告だけに信憑性を感じ、これで随分やる気がそがれました。

参考:(呉市の場合)
税率や条例などで違う場合もありますが、だいたいどの自治体も一緒です。

民泊の条件を調べてみた

もともと賃貸だけでは厳しい(周りの相場が安すぎる)ので、宿泊で稼ごうとしていました。近くに学校がある場合は、その学校長の了承が必要とか細々制約があるなかで、マンションタイプの公共スペースが広いところでは一部屋民泊用にするだけでなく公共スペースも民泊用の設備が必要となるとのことで(最終的には消防署判断ですが)これもコストアップリスクとなりました。

最悪のケースを想像すると

一度物件を保有するという経験をしていないのでまだ想像なんですが、一旦保有してしまうとそれを使ってメリットを出す(自分が住むか人に貸して利益を出すなど)ことを続けないといけません。それをやめてしまうと、あとは他の人に売却するか、建物を取り壊すまで固定資産税の負担、及び管理責任がつきまといます。鉄筋コンクリート造の建物を取り壊すには購入者の責任で取り壊し、となると1000万くらいかかるよという話も聞いていて。最悪のケースですが、撤退という選択肢が取りづらいのもリスクでした。

補助金やビジネスコンテストに応募

金融機関さんや自治体が主催するのいろんなビジネスコンテストにも応募してみました。軒並み一時の書類審査で落ちる中、1件だけ、呉市の信用金庫がやっていがる助成金だけ受賞することができましたが、それも「条件付き」。その条件とは「起業後、入札物件を購入してから事業を始めるという流れのため、もし当該事業が実行不可能となった場合は受賞を辞退し返還すること。」当たり前ですが、このお金でちゃんと事業やることが必要なんですよね。その点、やはり実現性というのは入札物件では低いなと感じました。(自分のビジネスモデルの未熟さを棚にあげまくっていますが)

一応、名前を載せてもらっています。(この時は起業予定の法人代表として参加していました。)

立ち上げメンバーもいなくなった。

その間、実行主体となる予定のメンバーが減り、もともと期待していた資本金も集まらず。誰が悪いわけではなく、人の都合も気分も変わるものだと実感。今回は特に計画から実行までの時間がありすぎた。その間、状況はどんどん変わっていく。もともと行動範囲が広くどんどん情報を集めていくメンバーの集まりであればなおさら。リスクを引き受けるメンバーもいなくなり、これも大きく撤退に傾きました。

結局、この構想は今、形を変えて実現しつつあります。問題はもちろん山積みですが、比較的リスクは低く、動きながらやっているとメンバーの意識もずっとその事業に乗っているので自分が前向きに動き続ける限りは、熱が続くと感じています。その話をまた、ある程度まとまった報告ができるときがきたらまた、書いてみたいと思います。

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